読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

おかまのお話

20代の後半に差し掛かったある日、公私ともにうまく行かず酒で酔うことで現実から目を逸らしていたことがあった。元気出せよと友人が連れて来てくれたのがおかまのいるバー? スナック? だった。おかまが私の隣に座り、例のごとく下ネタ中心の馬鹿話で私も心底笑ったし、楽しめた。店も閉店に近づき、蛍の光が流れ始めた時、そのおかまが静かな声で話し始めた。


「こんなお店に来る人はね、訳ありの人が多いのよ。不倫中のカップル、ギャンブルにハマって嫁、子供、住む家全てを失った男、借金で首が回らなくなって都会から逃げて来た女。心にも体にも傷がある人が集まって、でもほんの一瞬かもしれないけど、笑顔になって帰っていくのよ。いろんな人を見ているから、なんとなくわかるの。あなたも辛い思いして、今ここに座ってるんでしょう。お酒に逃げているんでしょう。」


見透かされているようなそれでいて、幼き日に母親に抱かれているような心地よさの中、深くタバコを吸い込んだ。もしかしたら、泣きそうになるのを堪えていたのかもしれない。


「まだ会ってすぐだけど、あなたのように優しい雰囲気を持った人はなかなかいないわ。この世の中はそんな人たちが住みにくいようにできているのよ。」


この時点で少し泣いていたかもしれない。このママ? パパ? の言う言葉が酔いの中で一言一言が沁みて、心の芯から温め癒してくれるようだった。震える手でもう一度タバコを深く吸った。


「辛い時は逃げてもいい。限界だと思ったら全てを捨てなさい。あなたが知らないことは山ほどある。」


…。


「良かったら新しい世界を見せてあげるわよ。」


口説かれていた。勘弁してくれよが9割だが、1割は一緒に帰ってもあるいは…だった。それは出鱈目に飲んだ焼酎の酔いのせいか、ママ? パパ? のテクニックのせいかはわからないが、あの時1割を選択していたら今頃どうなっていたんだろうと、ふと昔の思い出が頭をよぎったのであった。


桜の蕾が開く今日この頃、私の頭にもお花が咲きそうなので、今夜はドリカムの曲を100曲口ずさみながら夜明けを待つといたします。それでは。