立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

寒い夜にアスファルトで寝るお父さん

今日は昨日とは違って肌寒い1日だった。寒の戻りという表現がぴったりな夜になると思い出す。


あれは2年程前になるだろうか、日をまたごうかという時間、私は小腹を満たしにコンビニへ出かけた。街灯がほとんどなく、薄暗くて狭い道。過去にやけに迫力のある、臆病な私にとって恐怖でしかない黒塗りの車がグッと徒歩の私との距離を詰めて来てその距離1m、オープンした窓からこれまた、車に負けず劣らず恐怖という形容しかできないお方が私の顔を舐めるように見て、そのまま走り去ったことがあった。トラに睨まれたウマの気持ちが誰よりも理解できたし、文字通りトラウマとなった出来事であった。


その日もコンビニで買い物を終えた直後に不穏な空気を感じ取っていた。見慣れているはずの風景に違和感。辺りを見渡すと、私から10m程の所に黒い物体が地面で動いていた。この世の物か、それともあちらの世界の物なのか、どちらにせよ見ては行けない気がしたのだが、高まる鼓動とほんの少しの好奇心で、気づくとその距離2mまで近づいていた。目を凝らしてよくよくみると、なんてことはない普通の泥酔したお父さんだった。その普通の泥酔したお父さんが仰向けで、来ていたジャケットを丁寧に上半身にかけてまさに今眠ろうかというところだった。春は目の前まで来ているといえども、まだまだ夜は震えるような寒さ、面倒ごとは極力避けたい私だが、その時だけは親切心ではなく、正義感で声をかけた。


大丈夫? 危ないよ? タクシー呼ぶ?


それに対する返答が、


ありがとう、こんなはずじゃない、田中さんちは暖かい、であった。なるほどね、人は泥酔すると面倒臭いんだね、と改めて思いつつ、半分引きずるように手を引いてコンビニまで連れて行き、店員さんと目を合わせないように足早に帰路についたことがあった。


あの時のお父さん、元気にしてますか? また変なところで寝ようとしてませんか? 田中さんちは暖かいですか? 


今日のような夜にふと思い出し、切なくなるのは、あの時もっと親切にした方が良かったのではという後悔からかも知れないが、この後悔を払拭する懺悔はアスファルトで眠るほどのことではないと思うので、私はしっかり布団で眠るとします。それでは。