立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

愛と残業

残業代が出るからとかそんな問題ではなくて、約束があるから、プライベートの時間を大事にしたいからお先に失礼しますと言える世代が羨ましくも思うし、少しかわいそうだなとも思うのである。そもそも会社や仕事が好きならば自らサービス残業することがあるもんだし、やれブラック企業だ、それ訴えろだなんて事はないわけで、要は愛があるかないかでその後の展開は大きく違ってしまうものである。


10年近くも昔の話だが、一度、部署内全員で夜遅くまで連日残業していたことがあった。そこそこ大きなプロジェクトで、社運を賭けたとは言わないまでも、冬のボーナスの有無に関わる、ある意味で私たちには会社の傾き具合なんかよりも重要なものであった。日々遅くまで残業で、帰る時間もばらばらで、いい加減嫌になっていたので、今日くらいは早く帰らせてもらおうと、批判覚悟で帰り支度をしていた時に、役員の一人がやってきて、皆さん、お疲れ様です。手を休めて甘いものでもと、差し入れを持って来てしまった。さあさあ遠慮なさらず、どんどん食べて、そしてもうひと頑張りですと、全員と握手する勢いで檄を入れ始めた。わかるとは思うが、ありがとうございますと差し入れいただき、当然即帰宅はさすがに無理なわけで、私にとってははっきり言ってありがた迷惑。仮にこの役員はそろそろ帰りたがっている頃だというのを見計らっての差し入れだったとしたら、なかなかの策士である。


いただいたものが缶コーヒーにコンビニのスイーツと、そこまでお金をかけていない点にも注目で、身銭を切って社員を応援するいい経営陣をアピールできて、自分ら頑張りまっす、ボス! ボスのためなら腕の一本や二本、失う覚悟ですっ! と、部下達に強制的ではなく、分度器よりも正確な90度の直立不動で言わせることができ、もしも計算していたとしたら恐ろしいなあと思うのである。もちろん、そんなことはないのだが、洗脳ってこんな感じなのかなあと、ゆるい雰囲気の会社ではあったがたまにふと当時を思い出し、そう思うのである。決して嫌いな会社では無かったが、やりたいことが見つかったからサヨオナラしたあの会社は、あの役員はどうなってるのかなあと、会社のあった方角の空を見上げて眠ろうと思います。それでは。