立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

ブドウとノルマ

夏の風物詩を果物で言えばほとんどの人がスイカと答えると思うのだが、私はブドウである。と言うのも、私の出身地はブドウの産地で、幼い頃からこの時期になると冷蔵庫がブドウの箱で埋め尽くされていたものである。


だから、夏は飽きるほどブドウを食べてきたし、たまにスイカが食卓に並ぶと、まるで学校帰りに神社の裏でタバコを吸うような、もしくは人妻をデートに誘うような、少しイケナイことをしている心地にもなった、と言うのは流石に言い過ぎではあるが、それだけブドウが好きだし慣れ親しんでいたのである。


今年もその季節がやってきて、ありがたいことに実家からブドウが2箱送られてきた。我が家は嫁と二人暮らしである。きっと一箱ではブドウの良さを堪能しきる前になくなる気がして、足りないくらいならと2箱送ってくれたのだろうが、蓋を開けてびっくりである。


隙間なくミッチミチに詰め込まれたブドウは20房はゆうに超えそうである。仮に20だとして、それが二箱、1人20房を消費しなければなくならない計算である。消費期限は冷蔵庫に入れて10日前後らしいので、ノルマは1人1日2房。食べ物を粗末にすることが甘い卵焼きより嫌いな貧乏性の私にとってそのハードルはあまりに高い。


ゲームをやめない子供にゲームをやめさせる方法を聞いたことがある。1日1時間までと制限するのではなく、例えば1日3時間以上は必ずプレイすることと、ノルマを課すとすぐに飽きてやめてしまうという。もしかするとそれになるのではと危惧している。


燃えるような暑さの日も、雨で肌寒い日も、いつも私に栄養をと水分の補給をしてくれた、甘く、時に酸っぱい成長期と思春期を共にしたブドウを嫌いになってしまうのではないか。


お金のように何かのためにと貯めておけるならいいが、ブドウはそうはいかないし、いつか芽が出て花となり、また実をつけるまで育てられるほど甘くはないし、仮に実をつけたとしてもきっとそれは甘くない。これは試練である。


秋になるとブドウを名残惜しんで冬にはその姿を夢にまで見て、春には今か今かと待ちわびる、そんなブドウとのいい距離感を保ち続けるにはどうしたらいいか、そればかり考えながら、本日もブドウ1房食べて横になりたいと思います。それでは。