白のブラウス
普段から移動はもっぱら自転車なので、大雨の日以外自転車に乗らない日はほとんどなく、それならという理由で自分にとって値段的な意味で随分背伸びして(値段聞かれて答えると相手はだいたい拍子抜けした顔になるので、多分相当安い)買った、乗り心地のいいスポーティーな自転車は、控えめに言ってもママチャリよりはよく走る。はずである。
朝の自転車通勤でよく会うあの子にじつは夢中なのである。腰の上辺りまである長い髪を一つに束ね、いつも背筋をピンとのばして白いママチャリを漕ぐ姿は、いい意味で昭和美人。清純を絵に描いたような、白のブラウスがよく似合う、小学校の先生をイメージしていただけたら、当てはまる部分は多いように思う。
「みなさん、おはようございます。あと少しで夏休みですが、その前に、一学期でどれだけ勉強ができるようになったのか、これから試験をしたいと思います。ええーじゃない。はい、静かにしなさい。そこリコーダー振り回さない! 山下先生とは付き合ってません。大人をからかわないの! ほら早く始めるわよ。田中くん座りなさい。教科書を机の中にしまって下さい。こらっ、スポンジ食べない! しまいなさい。机の上は筆箱だけ。」
“生徒たちは言う事聞かないし、ネットの影響で変な知識もついてきてて、知らなくていい事聞いてくる。手を出そうなんてもっての他、少し強く叱るだけで親が出てくるし、高橋先生(お局)におべっか使うのももう大変。毎日がヘトヘトで綺麗にお化粧やお洒落をする暇もないし、大学時代から2年間付き合ってる彼氏とは2週間に1度会えたらいい方だけど、それでも私、がんばってます! 今すっごく輝いてるの!”
というイメージがぴったりなこの女子は、白いママチャリを、立ち漕ぎするでもなく、汗ひとつかかずに平然と漕いでいるのだが、すっごく速いのである。当然電気自転車でもない。すっごく速いのである。ついて行こうと思ったら太ももがそこそこぱんぱんになると言えば少しは伝わるだろうか。とにかく速いのはママチャリの天才か原チャリの生まれ変わりか、彼女の正体に興味津々である。
今日はいつもより暑い気がするのでブドウを食べて元気に寝ます。それでは。