立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

おハナシ

うわっとかヒェッとか、大人だから声にこそ出さなかったが、心の中では右往左往していた。できれば誰かに軽くでいいから背中を支えて欲しかったが、夜の洗面台の前ではそれもかなわない。


手前味噌だが、34歳にして銀歯なし、差し歯なしの全部自前の歯というのはなかなか珍しい。小学校6年で、良い歯コンテストで準優勝をさらったのは伊達ではない。それから今日まで歯のメンテナンスには気を配っていたつもりである。


急激な気温の下降に耐えれなかったのか、それとも親知らずが新たに顔を出そうとしてるのか、最近歯を磨くたび出血がすごい。吐き出した歯磨き粉が綺麗なピンク色に染まるのを何度見ても見慣れずに、毎晩洗面台で二度見を繰り返す日々。


歯医者なんて片手で数えられるほどしか行ったことはないし、そのほとんどが検診とクリーニングである。クリーニングでは歯石を取るときに多少血まみれになることはあるが、それでもキュイーンが嫌とか痛くて我慢出来ずに手を挙げたとか、そういう歯医者話をする、虫歯に負けた敗者さん達の話は下界を見下ろす天空人の気持ちで、言葉通り高みの見物であった。


ここにきて尋常ではない出血ではあるが、いつかは止まるだろうとどこかで甘い算段をしていたのかもしれない。日に日に濃くなる鉄の味に、いよいよメーデーが近くなりつつある気もするし、思い切って歯医者を予約しようと思います。もしも歯を抜かれたら、またそのおハナシをさせていただきたいと思います。歯がないだけに。それでは。