熱いお風呂と平和な夜
湯船のお湯がいつもより熱いのは、先に入った奥さんが次に入る私のことを考えて、お湯を足してくれていたからであるが、今日はほのぼのとよく気のきく奥様の良いところについて語るつもりは一切ない。
聞こえはしないがありがとうと奥方に小声で呟いて、大きくフシューと息を吐きつつ、外で冷えた体を、湯の熱さに慣らしながら肩までたっぷりと浸かる。1日の疲れが吐いた息と共に身体から抜けていくような感覚に、いっそのことこのまま、などと縁起でもないことは思わぬまでも、だらしなく、力を入れることなく生きたいと願いに似た思いを抱くのである。
湯船の中ではブログ書いたり、youtubeで井上陽水の少年時代を聞き、その歌詞に幼少期の頃の自分を照らし合わせ、思い出に浸って少し切なくなったり、デーモン小暮のメイクがどんなだったか思い出せず画像を検索してみたり、時間の流れが平日のものとは思えぬほど緩く感じ、クリスマスカラーに染まり始めた街の明かりが妙に平和に思えて、そろそろ湯から出ようかというタイミングで、会社の上司から電話が掛かってきた。
聞けばメモ一つ、三行で終わる仕事の話を、10秒いいかい? から始まる電話で10分ほど、酷似した言い回しで3回に分けて繰り返し聞かされ、電話を切って上がろうとした時にはすっかりのぼせていた。
翌日案の定私のデスクには赤字でデカデカと電話の内容のメモが乱雑に置かれ、昨日のお風呂とはまた違ったため息を深くするのである。
赤字は警告。小さく書くならまだしも、デカデカと走り書きすればそれはほとんど攻撃となる。やってくれ、ではなく、やれよボケと言われているような気がして、嫌な気分にさせられて、年末がぐっと遠ざかった気がした冬の日の愚痴りでした。皆様はお風呂は熱め、シャワーはもっと熱めで風邪をひかぬようお過ごしください。それでは。