立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

さすらいのサッカースカウトが行く

俺はどこにも属さないフリーランスのスカウト。サッカー選手のスカウトだ。サッカー選手と言ってもクラブや社会人チームから引っ張りダコになるような誰からも評される選手をスカウトするのではなく、中学〜高校の、まだ注目されてはいないが、「センス」はあるが実力を発揮できていない、所謂原石を強豪校に紹介し、それをきっかけとして入学、入部が決まれば、その学校のサッカー部監督から紹介料をいただくのだ。学校には知らせない内緒のお仕事、という事にはなる。もちろん、ここで金額を明かすことはできない。なぜなら俺はさすらいのスカウト、正式なルートを辿るタイプでなく、どちらかといえばドラッグを売る人たちと同類、正体を明かさないさすらいのスカウトだからである。


この仕事を始めて今年でちょうど6年。これまでに紹介した選手は全部で10人。この数字を多いとみるか少ないとみるかはお任せするとして、稼いだ総額はおよそ30万。今日も山へ芝刈りにバイトに行くのである。バイトはやりたくてやっているわけではないが、ご飯を食べたいし、屋根のある部屋でyoutubeでも見ながらダラっとした生活をしたいのでしょうがない。


サッカー選手のセンスの有無は、ボールの触り方を見たら一目でわかる。それがシュートでもトラップでもパスでもドリブルでもいい。うまい人には共通した独特の間合いのようなものがある。クマやトラのようなどう猛な動物と不意に対峙したとき、迂闊に飛び込めなくなるような、危険な香り、俺が求める原石を探す標となるのは、その香りだ。手前味噌だが、その香りを嗅ぎ分けることができるのが私の才能と、日々の努力の賜物である。


今日もサッカーには馴染み深い、記念すべき11人目の選手を見つけるべく、バイトそこそこに体育のサッカーや河川敷でボールを蹴る少年、公園でボールを追いかける赤子に目を凝らす。俺の求める原石はどこに転がっているかわからない。それがサッカー部とも限らない。いついかなる時にも、原石探しを中断してはならないのだ。続く。