立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

コラム-美容室との相性

いい女ぶってる女とあんこは目を瞑っても鼻をつまんでも耳を塞いでも、この先交わることも私の血となり肉となることもまずないと言い切りたいほど、この世の中で嫌いなものの上位2つだが、これらに次いで嫌いで苦手なものが美容室だった。髪が伸びる度、特に独り身の時は自分でよく切ったものだったし、結婚してからも奥様にお願いすることが度々あった。


なぜなら美容室では、相手の吐息が聞こえるほど、またこちらの吐息の匂いを気にせねばならぬほど近く、お金を払うこちらが話のテーマ探しに神経をすり減らし、緊張により噴き出る汗を何も言わずにそっと拭われる優しさからでさえも罪悪感に近い感情が生まれる場所、そんなイメージであった。しかし去年あたりからだろうか、ようやく美容室との付き合い方が分かり始めて、支払うお金に納得ができるようにもなってきた。


昨日も2ヶ月ぶりに行ったのだが、もう慣れたもんである。今日はどんな感じでと言われても、適当でいいんですけどと呟きながら、目の前に置いてあるヘアースタイルの雑誌をペラペラめくってこれっと指差してはい、終い。慣れからだろう。イケメンだらけの髪型サンプル集を開くこと自体に羞恥を感じていたのも昔、顔面を気にすることはなくなった。


喋りたくないというのは数度の訪問で伝わっているのか、あちらからの会話の提供はなく、髪を切り始めてから終わるまで、後ろの長さはこれくらいでいいか、シャンプーしますよ、の二回くらいのもんである。あとは私は眼鏡を外されて見えなくなることもあって、興味のない雑誌を食い入る様に読んでいるフリさえしていれば、むやみに話かけられることもない。


それでいて、終盤のシャンプーからマッサージにかけてはただ至福の時間である。どうしてあそこまで美容師のシャンプーは気持ち良いのか、気持ちよすぎて無意識に内股で握り拳を作っている。私はこの時間のために美容室へ行っていると言っても言い過ぎではなく、4500円のうち3000円はこのために払っている。逆に言えば、気持ちのいいサービスを受けに行ったら散髪もしてもらえたしラッキーな場所だったなあというのが私にとっての美容室なのだ。


格段に甘い雪見だいふくと苦味の強いコーヒーを一緒に食したような波瑠似の女性がスタッフというのは確かにプラス要素ではあるが、それ以上に一言も話しを振って来ないところが他にはない魅力である。何はともあれ、もうしばらくは髪を切る事には困らなさそうである。