雑記-トロトロとツルツル
口の中に入れるとホロホロと解けて脂身は舌で溶け、赤身は奥歯で噛むほど旨味がにじみ出る。醤油と砂糖と味醂がバランスよく煮詰まったとろみの付いた濃い飴色のたれだけで二晩はおかずに困らない。このたれをトロトロの肉と絡めて食べるなんて贅沢がはたして許されるのだろうか。
時間がかかっただろ?
いいえ、そうでもないわ。
これだけ味が染みているんだ。手間暇がかかっているに違いない。なあ、そうだろ?
そうでもないのよ。今は圧力鍋っていう、一見ただのクソ重たくてダサい鍋が、煮込む時間を信じられないほど短縮してくれるの。
すまない。美味すぎて話が入ってこない。少し黙っててくれないか。
まあ、なんて自分勝手な人なのかしら。
そんな会話が聞こえてきそうなほど美味しい豚の角煮が食べたい今、夜の2時を回ったところである。
私の胃腸の調子が急に崩れたのが一昨日で、昨日、つまりはさっきまで、今度は顔色を真っ白にした嫁がトイレとベッドの往復に忙しそうにしていた。
それを横目に見ながら熱いお茶と正露丸を用意してカーテンの隙間から溢れる街の明かりに都会の暮らしに憧れたあの頃を思い出していた時に気づくと平坦平凡な生活を望んでいた。軽く体調を崩して、大型連休の合間の仕事に出て、また数日後にあの日々が戻っくると思うと深夜のラーメンが欲しくなった。
口から入った食べ物が胃袋で消化されることで根本的解決にならないにしてもその場しのぎにはなる。極上のスープを求めるでも唯一無二のぷりぷりな麺を求めることもない。深夜3時までやっている、酔いつぶれたおっさんの多いあの店で連休第二シーズンの始まりを楽しめたならと思います。それでは。