雑記-仕事で出会った嫌いなタイプ

納期がすぐそこに迫っているのにすっかり失念していた、何とか協会の冊子に載せる広告の原稿を、雲の合間から顔を出すお月さんを眺めて泣きながら仕上げたのが2月頃だった。自分の不手際が原因だったにしろ、苦労した仕事は記憶にはっきりと残る。

先日、広告が刷り上がったのでご確認をと、出来上がった冊子の私が作成した広告の部分をコピーした紙が一枚送られてきたのだが、まるで輪転機でコピーされたかのような、文字は潰れて真っ黒、何の画像かもわからぬほど写真も同じく真っ黒であった。さすがにこれでオッケーは出ないし、わかるよわかる、コピーの問題だよね、本物はハッキリとしてるよねと、得意の「放って置く作戦」を決行しようとしたのだが、我が社の上官から、電話で確認しとけと言われた。「はい」と「イエス」しか返事を持ち合わせぬ私は、イエッサー、ボスと曇りない目で上官からの任務を遂行した。

確認したいポイントはただ一つ。文字と画像がはっきりとわかるか否かである。フォントがどうのとか、バランスがどうのとかどうでもいい。文字が読めて画像が分かればそれでいいのだ。

電話を掛けて対応してくれた方、ここではあえてババアと言わせて頂くが、このババアはきっと前日に飲み過ぎダンナに叱られ、朝は寝坊して息子のお弁当を作り損ねて、バスを乗り過ごした挙句、足首を捻挫して八百屋の店先に並んでいるカボチャに頭から突っ込んだ後だったに違いない。

私
送られてきたコピーでは文字も画像も潰れて何が書いてあるのかまるでわからないのですが…現物は大丈夫でしょうか？

ババア
私にはしっかりと見えてますよ。

私
なら大丈夫です。その確認だけしたくて。お手数お掛けしま…

ババア
納得いかないんならコピーし直して送りますよ。

私
いや、確認したかっただけなので。綺麗に見えているのであれば大丈夫なんです。ありがと…

ババア
こっちも納得してもらわないとダメなんですよ。コピー送ります。

私
ではお手数ですがお願いします。仮に修正があった場合は、今からでも間に合うんですか？

ババア
先ほどから出来上がった冊子のコピーの話をしてるんですよ 笑。普通に考えて間に合うわけないでしょう 笑。

私
ではコピーをお送りいただく意味があまりないように思うので、現物がきれいならそれで結構ですよ。

ババア
先ほどから納得いただかないといけないと言ってるじゃないですかー 笑。

私
えと、納得できなくても、もう修正は間に合わないんですよね。

ババア
だからずっと、出来上がりをコピーしてると言ってるんですよ。修正できないわよ 笑。

私
…そうですか。次回からきれいなコピーを送って下さいね。失礼します。ガチャン。

後日、極太の赤色マッキーで、でかでかとコピー(伸ばし棒が異常に長く最後は雑に払いかすれていた)と書かれた広告が送られて来た。私は間違っていないとは言うつもりはないし、細かな事を気にしなければ良かった、もっと上手くやれたはずだと、反省すべき点はとても多い。電話しとけと言った上官も、まあまあ怒りなさんな、となだめてくる感じだった事も含めて、私はこのババアが嫌いである。

残業で遅くなった帰り道、きれいな月を見ると、この時のことを思い出す。