立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

雑記-おじ様の優しさと私の罪悪感

アルマーニダンヒルかそれとも意外なところでポールスミスか。スーツに疎い私でも見ればわかる高価だろうネイビーのスーツをピシッッと着ている、白髪混じりだが綺麗に、かつナチュラルに整えられた髪が清潔感を漂わせ、背筋がピンッッと伸びて、きっと普段からトレーニングを欠かさなさそうなスタイルの良いそのおじ様は、愛に満ち溢れていた。少なくとも私にとってはそうだった。

 


手伝いましょうか。

 


中越しに聞こえた声に振り返ると、そのおじ様が3メートル程離れたところにいた。

 


いえいえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。

 


出勤前に、マンションの倒れた数台の自転車を起こしている私を見て、通りすがりに声をかけてくださったようだ。

 


大変なことになってますね。

 


お互い笑顔で会釈し、おじ様はそのまま通り過ぎていった。昨晩上陸した台風は、前回のものと比べたなら静かだった。テレビをつければ極めて危険、身の安全を、建物の中にいるように、と何度も繰り返し警告していた割にはちょっと拍子抜けと言えば不謹慎だが、でもそれが本音だったし、それで良かったとも思った。危険に備えて備え過ぎることはないし、台風で被害に合ったことがなければ年に何度も来る台風を甘く見るようになるのが人間だし、だけどそれが本当に危険だ。酷い目に合うくらいなら、肩透かしを食らう方が良いのだ。

 


ただ、おじ様に対して少し悪いような気がしていたのは、自転車がドミノ倒しになっていたのは、台風のせいではなく、私の膨れ上がったショルダーバッグのせいだからだ。