立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

雑記-雑念と大ピンチ

透き通るスープにやや細めのストレート麺、好きな先輩に話しかけられた女子の頰のような優しいピンク色をした薄いチャーシューが3枚。産まれたての子を抱く母の如き優しい煮汁を十分に吸って綺麗な茶色をした支那竹。トッピングはこの二つだけ。シンプルで美しい塩ラーメンである。

 


十数メートル先の藪に子グマがいるのを目で捉えた。まだ気づいてはいないようだ。近くに親グマもいるのだろうか。だとしたら危ない。さてどうする。息を潜めて去っていくのを祈りながらその場で1ミリも動かずやり過ごすか、それともゆっくりと距離を取り逃げ切るか。あえて大きな音を出せば逃げてくれるか。徐々に大きくなる鼓動、足のすくみ、額の嫌な汗、浅くなる呼吸の中、頭の中は思いの外冷静で、いろんな選択肢が頭をよぎる。どうすればこのピンチを乗り切れるのか。

 


固まりかけの溶岩のようなドロっとした黒いカレールー、炊きたてのご飯は白米ではなく、麦がブレンドしてあり、お肌やお通じ、貧血にも良しとされる所謂麦飯。ご飯とルーの境界線には、遠慮がちにルビーのように赤く輝く福神漬け。さらにご濃厚なルーの箸休め、サラダとトッピングのいいところどり、千切りキャベツをご飯の端半分に。最後にサクッと揚げたてカツをのせればそれが金沢カレー

 


雑念である。ついに姿を見せた親グマに見つかり、時間にして1分だろうか、1時間だろうか、1人と1匹のにらみ合い、膠着状態が続く。まさに今死の淵まで追い込まれ、いかにして命を死守しようか考えるべきなのに、浮かぶのは美味しいご飯のことばかり。熊さん親子は私をご飯だと思っている生きてきてもっとも危険な場面なのに。これはあれか、脳がショートしてるのかしら。もうじき優しかった爺ちゃんのもとへ旅立つのを予感してのあれか。そうだ、こうなったら抗おう。襲ってきたならせめて抵抗しよう。みんないつかは死ぬし、私の死肉があの熊親子の血肉骨となり、また他の生き物の血肉骨となる。自然の摂理とはそんなものだ。ほうら、一歩、また一歩と近づいてくるよ。さあ覚悟を決めて、せめて目玉の一つでも食らってやろう。

 


薄くサクサクとした生地にとろーりととろけたチーズ、トマトとサラミ、バジルがイタリアの国旗を表している。そうピザの王様マルゲリータである。