立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

雑記-幼い頃に知った1円の大きさ

何故か年末になると蘇る、幼き日の記憶がある。今から30年ほど前の話。どこぞのミルクを使った何とかソフトのような高級なアイスはほとんどなく、100円と消費税があればほとんどのアイスは買えていたと記憶している。冬も深まり雪がチラつく小学生低学年の冬休みのこと。

 


友人と、アイス買いに行こうぜと二人の小遣いかき集めて近くのスーパー向けて駆け出した。当時の消費税は3パーセント。だから206円あれば2人分は問題なく買えるのだが、店に着いてから持ち金を何度数えても205円しかない。家に出る時に数字に弱い友人が206円あった、と確かに言っていたが、それはどうやら勘違い、もしくは道中で1円だけ落としたか。どちらにせよお金は足りない。にもかかわらず、どれにしようかと目を輝かせてアイスを選ぶ友人に足りないよとは言えなかったし、なぜか私も何とかなるだろうという自信があったのは、ただのバカで無知な世間知らずだったからだろう。

 


2人でレジへ向かいお会計でポケットに入ったありったけの小銭を出した。レジで若い女性が10円20円と丁寧にお金を数えて私たちに、あと1円足りないよと優しい笑顔で言ってくれたが、友人は口を開けて何のことかわからない様子。私はほらね、と思いながらも同じくお姉さんを見つめるばかり。一瞬視線を落とし、無の表情に戻った後、今回は特別だけど、次からは絶対ダメだからねと強い目をしながら言って、また優しい笑顔で商品を渡してくれた。帰り道、友人と私の口数が少なかったのは、アイスを食べていたからではない。

 


「1円を笑うものは1円に泣く」

 


あの時の足りない1円はどうしたのだろうか。お姉さんが補填してくれたのか、それとも数え間違えたフリでもしてくれたのだろうか。私が1円の重さを学んだのは、学校でも親でもなく、近所の寂れたスーパーだった。