立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

二日酔いのヒーロー

いつだってヒーローはどこからか現れて、ピンチを救ってくれるものである。名乗るほどの者ではありません、クールに謙虚に去るその後ろ姿で世の女性を虜にし、小さな子供には夢を与える。


何年か前の新幹線での出来事である。その日は友人の結婚式に出席して帰る日で、調子こいて夜が明けるまで飲み過ぎたがために二日酔いであった。そこそこ混んでいる車輌に乗って、三人席の通路側の席をキープした。窓側はサラリーマンで真ん中が空いている状態。これで万が一にも対応できると、ホッとするやいなや、すぐに子連れの女性がやって来て、真ん中の座席に子供座らせ私の横に立っている。


共感してくれる人も多いと思うのだが、どけと言われているようなものである。


今日は二日酔いで、座っているだけでやっとなんだよと、きっとわかってはくれない想いを胸に、少し悪いなと思いつつも狸寝入りを決め込もうと目を瞑ったその時、子供が、お母さん座らないの? である。


きっとこの状況、私はヒーローにも悪にもなり得る状態である。このまま狸寝入りを決めこめば悪になり、すっと席を立ってどうぞと爽やかに言えればヒーローか。いえいえ、そんな悪いですと恐らく言ってくるお母さんに、そろそろダイエットしようと思っていたんだ、今日がどうやらその日のようだ、なんて小粋なジョークを交えて譲れたなら100点満点で80点は堅いだろうが、その日の私は生憎の二日酔いで、むしろヒーロー登場を待つ側の弱者である。であるのだが、こうなってしまっては心が全く休まらず、止むを得ずどうぞと譲ったのだが、どうもすみませんと遠慮のえの字も見せぬままに座ったママは大したもんだと思った、そんな日であった。


別にヒーローになりたかったわけではないが、子を持つママは大変でしょうし、それはそれで良かったのではないかと思ったし、二日酔いになるほど飲むのもいかがなもんかと考え出す年齢なので、今夜は寝酒無しで眠るとします。それでは。