ファンとしての責任感
一度好きになると、全盛期を過ぎたからと言って簡単には嫌いになれない。
何も中学校時代に片思いした女子のことを言っているのではない。スポーツ選手のことだ。カズこと三浦知良は、小学校時代に憧れたスーパースターだし、今尚50を超えてもプロとして活躍しているのは当時からすると想像すらできなかったこと。もちろん遠に全盛期は過ぎ去ったし、華麗なステップとフェイントでディフェンダーを置き去りにするのは難しいとしても、それでも当時の面影を重ねながら応援してしまう。ファンとはそういうものだろうし、一度ファンとなったら簡単に辞めるものではないと思う。少なくとも引退するまで温かく見守ろうやというのが私の考えである。
久しぶりに飲み交わした知人と、一ファンの在り方について議論した。日本人のほとんどの人が知っているアスリートと言えば、王貞治に長嶋茂雄、松井秀喜にイチロー、アントニオ猪木にジャイアント馬場、ケインコスギに池谷直樹と言うところだろうか。
すでに天寿を全うされた馬場さんはじめ既に引退していた元アスリートにも、私たちは一ファンであり続けているし、当時の姿がまだまだ記憶に鮮明に残る。
知人と私はサッカー好き。日本での歴史は野球ほど長くはないが、プロリーグ設立、ワールドカップ出場など話のネタには困らない。ここで毎回話題となるのが、名を残す選手は多かれど、世界でトップをとった選手がいないのは悲しいということ。酒量が増え夜も更けてくると決まって海外で活躍していた選手の話題となる。
「松井は好きだった。やっぱり日本に誇る名選手だ」
松井大輔。アフリカワールドカップで日本屈指のテクニシャンとして、ドリブルで相手チームを切り裂き、日本の初ゴールのアシストをしたのは記憶に新しい。トリッキーかつスピーディーなテクニシャンは、ゼクシィのCMで私の心を撃ち抜いた加藤ローサと結婚し、私の恋心を打ち砕いたのにも納得である。
「やっぱりバッティングには定評がある。日本のスケールは松井には小さ過ぎた」
松井は松井でもゴジラ松井であった。サッカーと思いきや野球なのね、いやはや酔っ払うとこんな感じのグズグズなところも楽しいのだが。松井秀樹の出身地は石川県である。野球だけでなく人間性にも優れているところが同郷として誇らしい。
「二刀流の大谷も凄いが俺には松井のようなスイッチヒッターにも魅力を感じるね」
松井は松井でも松井稼頭央であった。私は彼のことはあんまり知らないのです。確かに世界に名を残す名選手ではあるが、まさかそこが出てくるとは。意外だったので、酔いに任せて聞こえないフリをするのだった。