立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

雑記-壊れたメガネと怪我した女性

昨日リビングのソファーで就寝前の仮眠をとっている時、小豆ほどの何かが私の頰にコロッと落ちてきた。なんだろう。寝ぼけながらに確かにそこにいるという存在感。嫌な予感しかしない。


あれは中学生の夏の夜だった。光に集まる習性を持つ虫が自動販売機に群れて飛び回っている所へ自転車で突っ込み、大きめの、多分カナブンが口の中に飛び込んできた。ヨロけながらその虫をベッベッと吐き出したが、帰宅して何度うがいしても残る口の中の感触に、飛び回る虫がトラウマになった。


頰にコロッとなった瞬間そのトラウマがフラッシュバックし、なぜか眠ったフリをしておくべきだとおかしな思考回路が働いたので目を閉じたまま、一恐る恐る頰の上のそれに手をやると、茹でた枝豆のような柔らかさだが、確かに樹脂のような感触。虫ではない。そう判断し、安堵できた。


薄め開け確認すると、それはメガネの鼻の部分の先に、クッションとして付いているゴム製のカバーだった。知っての通りメガネの鼻の部分はメガネ自体を支えるために最も重要な場所。メガネの自重の多くがそこへ集中する。となると、カバーが取れて剥き出しになった金具のままメガネをかけると、鋭利な金属を鼻に突きつけられていることと同じこと。


もしもである。祇園の老舗にナタデココを運ぶ途中だった業者が上司からの理不尽に自暴自棄になり、ビルの屋上からありったけのナタデココをばら撒いたとしよう。そのナタデココを踏んで滑ってよろける街の人々。私は体幹がしっかりしているので大丈夫なのだが、両手首を怪我した綺麗な女性が今にも転ばんとしていたなら、ソッと手を差し伸べて体を支えてあげるのが男だろう。その女性も何とか転ぶまいと私にしがみ付いてくるはずである。ただ、最近丸くなった私の体に取っ手となるような箇所はない。なので、私の身に付けている物の中で最も捕まりやすそうなメガネに捕まる可能性は自然と高くなる。


となると、メガネは容赦なく私の鼻に突き刺さることとなる。きっとその姿を見たその彼女はこう言う。


「当分はパーティーには困らないわね」


と。すかさず私はどうしてだい? と聞き返すと、彼女は、


「だって鼻メガネの準備がいらなくなったじゃない」


おしまい。