立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

雑記-初めて包丁を握った日

まだ右も左も、それこそ上も下も分からぬ頃から包丁は危ない、火は危ないと保育園でも学校でも家でも、脳に刷り込むように教えられ、その頃は約束事としてキッチンに一人で入ってはいけないとされていた。ある日親の帰りの遅い夕方、一人キッチンに入り見様見真似でキュウリを切った。思ったよりも上手く切れたし、指は切らなかった。それに塩を振って空腹を満たしたあの日、大人の決めた約束事を破った。守れなかったのではなく、守らなかったあの日、確かに少しだけ大人になった。

 


それから年月が経ち、包丁の刃の部分を指の腹で滑らせてみて血を滲ませたり、油引いたフライパンを熱し過ぎて火が噴いたり、やるな、注意しろということを興味本位で破り恐ろしい思いをしたことも成長の糧となっている。

 


コンビニのイートインスペースでボスの缶コーヒーを飲んでいると、奥の席でアイスを食べ、生意気にもシルバーのアクセサリーを首からぶら下げた中学生くらいの二人の男子が、夏休みの宿題なんてまだ出していないし、ルールは破るためにあるみたいなことを話しているのが聞こえてきた。大いに結構だと思う。それくらいとんがっているくらいが将来有望だと微笑ましく聞いていたが、それぞれの母親らしい女性が帰るよと声を掛けたなら、ちょっと待ってとそそくさとゴミをゴミ箱に捨てて小走りで出て行く二人の背中はまだまだ小さかった。