立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

立ち飲み屋

年端もいかない頃の曖昧な記憶ではあるが、テレビに映るへべれけのスーツ着た酔っ払いの映像を見て幼いながらに何やってんだよ、恥ずかしくないのかよと思ったし、酔っ払うという行為をなぜ大人達は好むのか理解ができなかった。それが、気づくとお酒に頼る人生が始まっていた。とにかく酔うことが楽しくて仕方なかった20代を経て、30代、スーツ姿で酔う人の気持ちが少しはわかるようになったと思うと同時に、実は私もそちら側の人間だと気付いた。


社会に出るとやってられないと思うことが9割で、残りの1割に希望、夢を託すのも疲れてしまう。心の疲れを忘れるのは酔い、脳が体がそれを求めるのである。


先日最近増えてきた立ち飲み屋に酔いを求めに行った。店の中はすでに人がいっぱい、陽気な人で埋め尽くされた満員電車と例えたくなるような空間だった。何とか場所を確保して、さて始めますかととりあえずの生を注文し、壁に貼られたメニューに目をやる。しめ鯖に秋刀魚の塩焼きにお造りに、なるほどお魚が強いお店なのね、いいじゃないかと、ビール飲みながら大将と軽く話し、私が北陸出身だと告げると、


兄ちゃん、北陸かい。なら舌が肥えてるね。うちの魚はうまいぞ。ブリもホタルイカもやっぱり富山のが絶品だね。こんな商売してるからね、お客様に少しでもいいものをって思うから全国いろんなところに食べに行って、こいつ食べるならここってのをがんばって探してね。できるだけいいものをいい状態で仕入れるんだよ。だから自信持ってうまいから食べてってって言えるんだな。でもごめんね、今日ほとんど出ちゃって穴子ときゅうりしかないんだよ。ははは。


と言いながら厨房に消えて行った。いいよいいよ、大将の心意気聞けただけでビールがうまくなる。きゅうりと穴子あれば十分じゃないの、


きゅうりと穴子ください。


すいません、たった今キュウリも切れちゃいまして。すんまへん、へへへ。


ヘラヘラしたバイトのお兄ちゃんに少しだけ絡んで、煮アナゴ3匹をたいらげてから店を後にした。うまいこといかないなあとも思いつつも、穴子は本当に美味しかったのでまあ良しとします。それでは。