立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

よく効くお話

おい兄ちゃん、ちょっと人助けすると思って金貸してくんねえか? 友達が昨日事故って困ってっから助けてやってくんね? 心配しなくても今度返してやっから。な? 嘘つくんじゃねえよ。ちょっと跳んでみろや。あるじゃねえかよ、ポケットのもん全部出せや。大人しく出せば痛い目みなくてすむんだよ?


みたいな漫画のようなカツアゲが昔は本当にあったかどうかは知らない。が、もしもである。車が通れないような細い道で、向こうから身長190センチ、体重120キロを越えようかというスキンヘッドにサングラス、たっぷりとヒゲを蓄えタトゥーがモリモリっと入ったロベカルの太ももよりも太い二の腕を持った、ハーレーがお似合いなアメリカンが歩いてきたとしたら。道の凹みに足を取られ、転んだ拍子に脱げたサンダルがアメリカンのスキンヘッドにペチッとヒットしてしまったら、ヘイ、ジャップ、と首根っこ捕まれ軽々持ち上げられて抵抗むなしく地面にビターッである。


もちろん空想であるが、もしも絡まれたらと、昔から道を歩いているときなどに考えることは少なくはなかった。たんに小心者、チキンハート、ビビりであるからに他ならないが、運良くこれまでいっさい絡まれることは無かったし、仮に絡まれてもここならこうやってと逃げ道を考えておく癖がついている。


20代の後半、酔うために生きていると形容できる日々を過ごしていたある日、その日も馴染みの店でお酒を嗜んでいたのだが、たまたま隣になったのが、40代と思しき綺麗な女性で、私に対してやれ若いややれ筋肉触らせろや、なかなかご機嫌であった。…のは初めの一時間だけで、そこからは旦那の不平不満を聞かされた。どうして男は浮気するのか、から始まり、年収が少ないやもっと優しくしてほしいなど、一通り考えられそうな不満をぶちまけていた。旦那さんも大変なんですよと言おうもんならヘビのように絡んでくるもんだから大変で、途中から大人しくそうだねそうだね、あなたが一番と共感して(なだめて)いたのであるが、一番の不満、それが旦那さんの昔の武勇伝を毎晩、しかも1日何度も話すからうんざりするということらしい。しょうもなっと思いながらも、それは大変ですな〜と共感して(いなして)いたのだが、この話を2時間で5回も聞かされた私はもしかしたら、この奥さんの気持ちが最もわかっていたのかもしれないし、絡まれた時の逃げ方もしっかりと詰めて考えねばなと思った若かりし頃の思い出でした。それでは。