立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

コラム-警察との思い出

随分昔の話だが、京都の繁華街で友人と明け方まで飲んで、さあ帰ろうと地下鉄目指して歩いていると、交番すぐそばの横断歩道に携帯電話が落ちているのに気がついた。装飾品から察するに女性のものとみて間違いはない。酔ってはしゃいで車に乗り込む時にでも落としたか、それとも何らかの事件に巻き込まれたか、いやいや物騒な世の中と言えど、交番前でそれはないだろうと、思考を巡らせるうちに自然と手にとってしまった。


今宵の酔いは良い酔いですなとか、高貴な言葉遊びを楽しんだ数時間後、店は閉店の時間、間も無く朝日が昇るからと名残惜しいまま、まだまだ飲めると豪語しながらの帰宅となったものの、歩き始めてすぐに眠気がやって来た。この状態でなぜ落し物を手にとってしまったか。交番に落し物を届けた経験のある身にとって、手続きの煩わしさはわかっていたはずだが、携帯電話の紛失は、親の死に目に会えなくなると言っても不自然ではない。


落とし主の困り様が容易に想像できたからなのか正義感かお節介からなのか、とにかく手にとってしまったものを、そのまま持ち帰るのはまずありえないし、だからと言ってそのままそこに放置しておくのも心に痼りを残してしまいそう。


仕方なく交番に届けると、案の定ではあるが、嫌がらせとも取れてしまうくらいの丁寧な聞き取り調査が始まった。どこで拾ったの質問に、指差しながら目の前の横断歩道と答えようとも、ちょっと待ってとでかい地図広げ始めた時には、酔いと朝帰りがどれだけ心身に負担をもたらすか、ただの親切心でやった行動を仇で返された気分なりと切々と語りたくなった。


眠い目こすって書類を書いて私にとって無駄なニ十分を使ってようやく解放された時には、すっかり日が昇り、眩しい朝となっていた。


後日警察から無事本人に届いたとの連絡を受け、それは良きことではあるが、あの日のニ十数分間は帰って来ないわけで、だからと言って文句を言うつもりはないが、手続きがあれだけ面倒臭さいのを知っていたら、落し物を届けようというつもりも失せる気がする今日この頃。本当なら鼻のお話をしたかったのだが、前置きが思ったよりも長くなったので、本日はこの辺りで失礼。それでは。