立ち聞きweblog

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コラム-冬の寒波と不運なコーヒー豆

始業時間までのリラックスタイムで、高級そうな箱に入った、焦げた強い香りばかりが、香りだけに鼻に付く不味いインスタントのコーヒーでも、無いよりは幾分かマシなので、少し多めのお湯を注いでデスクに運ぼうとした時に手が滑って全てを床にぶちまけた。お湯を注ぐ前に手がすべっていたなら、あるいは高そうだからこれにしたという身も蓋も感謝の気持ちもない理由で選んだ不味いコーヒーをやめて、安定の安いお茶にしていたなら、瞬時に浮かぶ後悔と苛立ちのやり場はなく、古傷で傷む膝を庇うフリして、本当は破れそうなパンパンのズボンが裂けぬよう気にしながら、雑巾で丁寧に床を拭いた。


覆水盆に返らずという諺は今このタイミングで使うのが正しいか正しくないかは各々の判断に任せるものとして、このインスタントコーヒーの入れ物は、前述した通り高級そうなので、不味いもう一杯、とかつて世間を席巻したあの名台詞で気軽に手を出せる雰囲気にはなく、仕方なくお湯だけで我慢する羽目になったのは、紛れもない、冬の寒波の影響である。


私にこぼされ床に飲ます事となったコーヒーは、コーヒー豆達は何のために生まれてきたのか。雑巾に吸わせるためではなく、床を綺麗にするためでもなく、消臭のためでも人に飲まれるためでもない。きっと意味があって生まれてきたのに、私の手元の狂いから、雑巾の臭い汁と共に下水に流される運命となってしまっては、悔やんでも悔やみきれないだろうけど、悪いがそれはコーヒーだけに水で流してもらうとして、全部悪いのは冬の寒波の影響のせいである。


度重なる冬の寒波で思い出したが、今年はまだまともに寒ブリを食べられていない。寒さに身が引き締まり脂肪を蓄えたブリの味は、まさに絶品、酒が進むしご飯も進む。冬に脂が乗って美味くなるとされる魚の中でもトップクラスだろう。


しかしである。前々から思っていたのだが、頭にゴキを付けると途端に忌み嫌われる昆虫となるのはいかがなものか。ブリは出世魚として縁起物でもある。イナダやハマチにゴキをつけたところで、鼻くそをピンと飛ばして知らぬ顔だが、大将となったブリの頭にゴキを付けた瞬間、丸めた新聞紙や雑誌でパチーンといきたくなるのはやはりあの虫が苦手だからに他ならない。


大好きなものと苦手なものが、あたかも同類ととられかねない名前なのもきっと冬の寒波の影響なのだろうが、あんまりじゃないかと語気を強めて訴えたい。ゴキブリだけに。