立ち聞きweblog

待ち合わせで相手が遅れてる時とか、何故か眠れない夜とか、通勤や通学の電車とかで流し読みして下さい。

狼狽

ほんの20分前に家出る時は覚えていたし、途中コンビニ見かけるたびに頭をよぎっていた。お仕事のお供にもはや欠かせなくなりつつあるフリスクエナジーミントが残り少なくなっているにもかかわらず、職場に最も近いファミマに寄るのを綺麗さっぱり忘れさっていたのは、私がバカだからでも、いよいよいい歳だからでもなく、ただ単にひどく狼狽えていたからである。


普段から何事も気に留めず、京都で最も空気に近い男を目指しているので、冷静沈着、後ろからタックルされようが執拗にユニホームを引っ張られようが顔色変えずに寸分の狂いのないフリーキックが蹴れるピルロと同格、いやそれ以上だと自負しているのだが、本日ばかりは狼狽えざるを得なかった。


いつもは大通りを通ることが多いのだが、信号の関係や気分で、一本入った細い道を通ることがたまにある。今日もそのパターンで、何となく小道を走っていると、進行方向20mも離れた所だろうか、声がするから注目すると、男女が何やら喧嘩しているようだ。


朝から元気ですなフフフと、微笑ましく、見て見ぬ振りして、実はしっかりと野次馬しながら通り過ぎようとしたのだが、5m程に迫ったところで彼女が彼氏に思いっきりバヂンッとビンタした。例えるならば目の前に鬼が現れたとして、やらなきゃやられるという状況で鬼に喰らわすビンタ並であったのだが、喰らった彼氏はヨロヨロと私の自転車の前でへたり込んだのである。


彼女を見ると、すみませんと笑顔で言ってくれはしたが、笑っているのは口元だけで、邪魔するならあんたにも喰らわすよと確かに私にはそう聞こえたので、冷静装ってその場から猛然と自転車漕いで離れた。よくある事ではないが、あってもおかしくはないと思うし、そんなに狼狽えなくてもと思われそうなので言っとくが、その男女、おそらく50オーバーであった。


BARが閉店を迎える時間帯に差し掛かった繁華街の路地裏ならまだしも、通勤時間にオフィスビルが建ち並ぶあんな所であんな光景見せられて、狼狽えないやつなんていない。今日のコンビニウッカリ分はしょうがないし、明日補うとして、今夜は温かいスープとそれによく合う温まるお話が聞きたい、そんな気分なのでこの話はこれにておしまい。それでは。